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書斎本舗の資料室

「晩翠詩抄」岩波文庫 1971(改版)


ジャンル:ポエム
定  価:-

『三国志Ⅴ』コーエー 1996年 /SS他
というゲームを当時だいぶ遊びました。

コーエー三国志シリーズは、シナリオ
選択で、開始年を選べるのがおなじみ
ですが、店主はどちらかというと前半、
黄巾の乱(184年)や洛陽炎上(189年)
あたりから、臥龍出淵(208年)までを
選択するのが常でした。

その後には、あまりプレイした経験が
無い三国鼎立(219年)、星落五丈原
(234年)というシナリオがあります。

終盤シナリオは、有力な在野武将に
偶然出会う楽しみが少なくなり、
勢力間の実力差もはっきりし過ぎて
ダイナミックさに乏しく、若年の当時
敬遠しがちでしたが、反面、
大組織を動かす経営力の良否が問われる
シナリオ、と言えなくもないため、
大人向けなのかもしれません。

今再び遊べるなら「星落五丈原(234年)」
を、蜀国の君主・劉禅でプレイし、
諸葛孔明の軍勢で、魏を圧倒するような
展開を試みたいような気がします。
相当難しいでしょうが。


さて、日本人の三国志好きは歴史が古く、
「荒城の月」や小中学校の校歌の歌詞を
多数手がけた詩人土井晩翠(1871~1952)
も、諸葛亮ファンだったようですね。
「星落秋風五丈原」という長めの詩を
出しています。

~祁山(きざん)悲秋の風更けて
 陣雲暗し五丈原、
 零露の文(あや)は繁くして
 草枯れ馬は肥ゆれども
 蜀軍の旗光無く
 鼓角の音も今しづか
 丞相病あつかりき      ~

この晩翠の有名な詩は、のちに誰かが
節付けをしたため、その楽曲を知る
方もいるかもしれません。


おい、むかしの光は今、
どこにあるのだ
おい、お前の心の中の
昔の光が、

無くなってるじゃないか
                ~「晩翠詩抄」解説~

     

晩翠は、すべての子供たちを病で失い、
住居と多くの蔵書を戦災で失い、妻は先立ち
孫とも別離し、晩年を迎えます。

この詩集の末尾解説(石井昌光氏)によると
81歳で亡くなるその2ヵ月前に「荒城の月」
詩碑の除幕式(1952年・仙台青葉城跡展望台)
に参席していたようです。

式典ではNHKのインタビューを受けて、
ただ一言。

身にあまるほまれをうけて唯なみだ
感謝をさゝぐ一切の恩

と呟いたきりだったそうです。

その来し方が大変な境遇であっても、
最期には、世の中の全てに感謝をして
素直に旅立てるものかと、
やはり大詩人にもなると言うセリフが
格別ですね。

上記青文字の名言の方は、
依然敗戦の爪痕を残す時期に催された
「荒城の月」詩碑の除幕式にて、
参列者全員で〈・・・昔の光、今いづこ〉
と斉唱していたら、参列者が続々と、
ハンカチで目頭を押さえ始めたシーン
について、本の解説者がその心情を
代弁したところです。

それは明らかに詠嘆の類いではなく、
叱咤の声として響いたとのこと。
察するに余りありますね。

戦後すぐの頃、ある地方都市にあった
忘れがたき名シーンだと思います。
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